
(3)
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ワンカップ
国道16号線、帰り道である。夕方になり、お腹もすいてきた。やっと探して入った店がうどん、ソバを売りにしているチェーン店。安いし、温かいものを食べられるので結構お気に入り。お腹をいっぱいにして、さあ、もうひとガンバリと駐車場から道路へ出ようとしたその時、歩道を自転車に乗ったおじさんが左方向から来た。先に行ってもらおうと多めに前を開けて待っていると、おじさんは、ニコッ!と笑って、右手に持っていたワンカップを高々と挙げて挨拶をし、優々とゆっくりと走ってゆきました。その優雅さにしばらく見とれてしまいました。埼玉のかっこいいおじさんでした。
わかってる〜
新潟駅から国道へ出ようと走るせまい道、都会ならどこでもある夕方の渋滞。仕事は終った。後は帰るだけ、ゆっくり帰ろう、事故っても損だ。などと考えていたところへ、こちらの路地へ曲がりたい車に止められて対面車線は、もっと渋滞。どうせ混んでいるんだから、みんな入れてやれば良いのにと思いながら、車間距離を取りパッシング。乗用車、急いで曲がる。その時、大きなラッパの音。曲がる乗用車のすぐ後ろにいた大型ダンプ。頭を下げ、手を上げ、挨拶していた。さすが「わかってる〜」。ふつう、軽トラックに挨拶していく大型車はほとんどいない。しかし、人の気持ちを爽快にさせてくれた、かっこいいおじさんドライバーがここにはいた。
たのもしい
中央道、雪が降った後で、霧もかかりはじめた長野。急にエンジンがブスブスと止まった。JAFを呼び、近くのSAまで運んでもらう。SAのGSでリフトを借り、自分で見る事にする。JAFの人も一緒にいてくれた。ディストリビューター内へ水が入ってしまっていた。きれいにするとエンジンは動いた。ここでJAFの人とは別れる。しかし、その後も走り出すと調子が悪い。高速をおりようと路肩をトロトロ、次のICを目指して走っていると、後ろにJAFがいた。先ほどの方とは違う。訳を話すと危ないからと先導してくれた。無事ICをおりる事が出来た。お金にならないのに、困っているだろうと、声をかけてくれた優しさ。その、頼もしさには、人柄からくるかっこよさが滲んでいた。
小さな名車、高速を走る
その名をR360クーペという。東洋工業 (現 マツダ)
初の4輪乗用車で、軽自動車に4サイクルやオートマチックトランスミッション
(2速)
を採用するなど画期的なメカニズムを備えており、まるでスポーツカーのようなスタイルを限られた枠の中で、コンパクトにまとめた点が多いに注目され、キャロルにバトンタッチする1966年まで生産されたものだった。その小さな体が高速道路の端のそのまた端を走っていたのである。その体はレストアされているようで、とても奇麗だった。現代においてその性能はけして凄いものではないが、優れた技術に裏打ちされた優美さは最先端の車にも退けを取るものではなかった。暫く後ろや横に着き、目の保養をさせてもらいながら、幼き頃に見た水冷4気筒・360ccの芸術キャロルのエンジンを思い出した。何年もたった今、感動を胸にバックミラーに目をやりながら先を急いだ。
黒い壁
ここは東北道、車は北を目指し急いでいた。夕方までに青森との話だった。いつものことだがお客さんの注文には無理がある。しかし、応えなければならない。それが私達の仕事である。車を止めたのは給油時だけという状態でとにかく走った。走り続けること何時間ぐらいたったころだろう、目の前の景色が急に変わった。今走っているところは晴れていた。しかし、向かう方向は夜のように暗くて見えないのである。「何であの先から見えないんだ。おかしいな〜?」山あいの道から見渡せるところへでたその時、一瞬たじろいだ。「道がない!。ウソだろう。」確かに私が走っていたのは東北道だったはずだ。ここへ来るまで工事中の看板もなかったし変だ。「夢でも見てるのか?」。バックミラーで後の安全を確認し、ハザードを点滅させ、速度を30〜40km位まで落とし、よく見てみると、真っ黒な壁が空まで続いているような感じで土砂降りの雨が降っていた。線でも引いたようにくっきりと別れている雨の境目を目で追って行くとどこまでも切れ目なく両側に続いていた。自然が作りだすトリックが「道がない!」と思わせたのだった。さすがにこの壁の前では乗用車に限らず、大型トラックでさえスピードを落とさずに飛び込んでいく車は一台もなかった。こんな経験は後にも先にもこの時だけである。異様な興奮を抑えるようにヘッドライト、フォグランプを点灯し、ワイパーをハイスピードで動かし、ゆっくりと黒い壁の中へと入った。黒い壁の中は真夜中の集中豪雨のようでスピードを落とさないと前が見えない。大粒の雨がたたきつけるように降ってくる暗闇の中、前を走る車のテールランプを頼りに先を急いだ。
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